計画はなぜ、崩れるのか?楽観的な計画を立ててしまう理由と解決法

あなたは、旅行に行く時、「時間があるからたくさん本を持って行こう」と思って結局2章くらいしか本を読まなかったり、上司から「いつまでに仕事終わる?」と聞かれると、「今日中に終わります」と答えたものの、結局夜遅くまで残業するハメになった経験はありませんか?

 

このように、現実味のない楽観的な計画を立ててしまうことを心理学の世界では、Planning Fallacy【計画錯誤】と言います。過去の似たような事例を無視して楽観的なシナリオやベストストーリーに沿った計画を立ててしまう人間の性質です。

 

私たちは【楽観バイアス】や【確証バイアス】という傾向が備わっています。 その名の通り、人間は物事をつい楽観的に捉えてしまう、未来のことをこうだと根拠なく決めつけてしまいます。これらのバイアスによって、計画を立てるときに自分で考えた理想のスケジュールを立てて、メールの返信や雑用、その他緊急の作業といった、仕事を邪魔する出来事が起こる可能性を甘く考えてしまうのです。

 

 

 

実際に、このバイアスは経済的に成功している非常に地位の高い政府関係者や経営者の人たちが行なったプロジェクトにも当てはまります。下記の例を見てみましょう。

 

1968年から1999年までの間、世界で建造された鉄道のプロジェクトのうち、実に9割ものプロジェクトがコストを過小評価し、乗客の見積もりを過大評価していました。見積もりを45%コストオーバーして、予測の半分にも満たない乗客数しか鉄道を利用しませんでした。(デンマークの経済地理学者であるBent Flyvbjergらによる調査)
2010年に行われた、プロジェクト規模が1500万ドル以上と大きな規模の5400を超えるITプロジェクトを対象とした調査で、見積もりに比べてコストは平均で44%オーバー、期日は平均7%オーバーである一方、実際の利益は見積もりの半分以下でした。(マッキンゼーとオックスフォード大学による調査)


1959年に着工したシドニーオペラハウスの建設では、天候不順、政治的な問題など様々な"想定外"の問題が発生し、当初は1963年に完成する予定でしたが最終的な竣工は1973年と計画の10年遅れになりました。さらに建設を進めていくうちにコストがどんどん膨れ上がり、最終的に1400%ものコスト超過をしました。(つまり当初予定の15倍!もの費用が掛かりました)

 

では、どうしたら、このようなバイアスを克服することができるのでしょうか?それは私たちが計画を立てるときには過去の似たような失敗を"無視"したり"例外扱い"しないことです。つまり、私たちが、計画を立てて、過去にミスをしたケースを分析して知っておくことが大事です。「ああ、自分はこのような時にいつもこういうミスをしているな。」と気づくと、同様のパターンのミスを防げます。

つまり一旦立ち止まって、過去の計画したミスを振り返り、それを次の計画に活かすことです。今までは、メールの仕事は20分と想定して胃たけど、実際には、30分かかっているなと、気づくことで新しい作業の想定時間の物差しを作ることができます。

 

計画は常に、【作業や予定に対してかかる時間の物差しを新しく更新する作業】だと考えましょう!そうするとあなたの計画はどんどん正確になっていき、毎日計画通りに仕事やプライベートの時間を過ごすことができます。

 

倒れない計画の立て方は他にもたくさんテクニックがあるので、また別記事で詳細のご紹介をしますね!楽しみにしていてください(^ ^)

 

 

参考文献

・R. Buehler, D. Griffin, and M. Ross (1994) Exploring the "Planning Fallacy": Why People Underestimate Their Task Completion Times
・M. Bloch, S. Blumberg, and J. Laartz (2012) Delivering large-scale IT projects on time, on budget, and on value
・B. Flyvbjerg, M. S. Holm, and S. Buhl (2002) Underestimating Costs in Public Works Projects Error or Lie?